「好き」のはじまりって、なんだろう。

あの人が読んでるあの本には、
どんなことが書かれているんだろう。
あの本を読んでるあの人は、
どんなことを考えているんだろう。
その本のことも、その人のことも、
きっとそんなふうに気になりだして、
もっともっと知りたくなっていく。
そうして、またあたらしい「好き」が
どこかでひっそりとうまれるのです。

そんな「好き」がうまれる場所を、
どうにか園内につくりたい!
その思いつきを、カタチにすべく、
このコーナーは立ち上がりました。
コンセプトはズバリ、
「好きのはじまり」。

とまぁ、偉そうに書きましたが、
つまりは好きな本について好きなように
書いていきます、なコーナーです。

あなたの好きな本、募集中です。

*お名前 (ニックネーム)

*性別
 男性 女性

*年齢
 0~10代  20~30代  40~50代  60代〜

*本のタイトル

*おすすめポイント

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少々お待ちください。
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「トンボ」という文房具メーカーをご存知でしょうか?
たぶん、ほとんどの人が知っていると思います。有名ですもの。
実は私(当園総務の、兼島拓也と申します)、この「トンボ鉛筆」という会社が大好きなんです。とくに、消しゴムは、絶っ対にこのメーカーの「MONO」シリーズ。(ただ最近は、消しゴムを使う機会がだいぶ減ってしまっています。残念)

その理由は、よく消えるから!

というのももちろんあるんですが、それよりももっと大きな理由があるんです。
私がトンボファンになったきっかけは、この会社の広告を見たことから。
正確には、広告のコピーを読んだことがスタートです。

その広告はコチラ ↓

人は、書くことと、
消すことで、書いている。


消しゴムを使う人を見ると、
あ、この人はいま、一生けんめい闘っているんだな、
と、なんだかちょっと応援したくなります。
自分の想いを、正しく、わかりやすく伝えるには
どう書けばいいのか。
それと真正面から向きあい、苦しみ、迷いながら、
でもなんとか前へ進もうともがいている。
消す、という行為には、人間の、
そんなひたむきな想いが
こもっている気がしてなりません。
文房具づくりにたずさわって、まもなく100年。
トンボは、「書く道具」と同じくらい、
「消す道具」を大切に育ててきました。
日本の定番と言ってもいい消しゴム。
品質をみがくことで、大きな市場を切り開いた修正テープ。
そこにあるものを、すばやく、美しく、
カンタンに消し去ることで、この世にほんとうに
生まれて来なければならなかったものが
姿をあらわしてくる。
消すことは、また、書くことである、と信じるトンボです。

トンボが動いている。人が、何かを生み出している。

一企業の一広告なのですが、この文章を読み終えた私は、自らの人生に対して光を見出せたような気がしました。

「人は、書くことと、消すことで、書いている。」

一見、「?」とぼんやりしてしまいそうにもなるし、ともすれば「当たり前のこと」を、いちいち述べているだけのようにも思えます。

でもじっくりと読んでみると、勇気と希望をあたえてくれる、素敵なメッセージが詰まっていました。
「失敗」してしまうことや「失う」ことは、どうしてもネガティブに捉えがちになります。誰だって、失敗をしたくないし、持ってるものを失いたくない。
仕事や恋愛や人間関係や将来の可能性など、いまの自分がもっているものを「消す」という行為には、大きな痛みを伴うし、そういった状況に直面するのは、とても怖いものだと思います。

ですが、このコピーでは、「消す」という行為に光を当てています。
「消す」ことで、本当に大事なものが浮かび上がってくる。
その言葉をもらえるだけで、「失敗」や「失う」こともポジティブに捉えることができるようになります。

たとえば、恋人にフラれてしまった。
でもそれは、より素敵なパートナーと出会うための「消す」という行為かもしれない。
たとえば、新しいことにチャレンジしようか迷っている。
もしそれで失敗したとしても、それは自分の在り方や将来を確かめるためのチャンスにもなり得る。

私はこの広告から、そうメッセージを受け取りました。
読み終えた瞬間、いたく感動し、勇気をもらい、その足でTSUTAYAへと向かったことを覚えています。
大量の消しゴムをレジで精算した後、「あぁ、まんまと企業の思惑にハマってしまった(笑)」なんて思いましたが、でも、こんな思いで商品をつくっている会社なら、喜んでハマっちゃおう。
それから私は、トンボに動かされております。

そういえば、よくメディアにも登場する片付けコンサルタントの「こんまり先生」こと近藤麻理恵さんが、こんなこと言っていました。
「『捨てる』のではなく、大事なものだけを『残す』のです!」
言っていることは同じだなぁ、とただいま感心しております。

この広告のコピーを書いたのは、岩崎俊一さんというお方。
トンボのほかにも、年賀状や「ほっともっと」の広告なども手がけたコピーライターです。
そんな岩崎さんが書いたコピーやエッセイを集めたのが、今回の記事のタイトルにもある『幸福を見つめるコピー』です。
岩崎さんの、モノゴトに対する真摯な視線や想いが、読んでいてビシビシ伝わってきます。
広告のお仕事とは関係がなくとも、たくさんの人があったかい気持ちになれる本だと思います。
おすすめです。

「幸福を見つめるコピー」(2009) 著・岩崎俊一


(2015-01-08-Thu)